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Showing posts from July, 2024

長期的な目線での人材育成が企業を強くする

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 長期的な目線での人材育成が企業を強くする  人間50歳にもなれば肉体的な能力は確かに低下する。しかしその人間性や経験はむしろ輝きを増すものである。実際に私が長年住んでいたシンガポールやタイでも、30歳から40歳のスピード感あふれる働き盛りの駐在員よりも、60歳過ぎのベテラン社員の方が人間性が優れている為、工場での技術教育や商談の場では重宝されていたし、周囲の敬意も集めている事が多かった。特に際どい商談の場では、お食事の際のちょっとした作法やお店での立ち振る舞い、場の空気感の作り方等が契約の行方を左右する事がある。 コレは、社員の人間性が商品の品質に比例する事が多いからであるが、よりレベルの高い交渉の場になればなるほどこの判断基準の傾向は高くなる。若手社員では難しいと言っているのではないが、歳を上手く重ねたベテラン社員の方がより人生経験が豊富であり会話の引き出しが多い為、交渉の場がよりスムーズに進む可能性が高いと言う事である。また、人間性が高いと場の空気の変化も敏感に察知しやすく、得てして予想外の事が起こりがちなタフな交渉の場を上手く乗り切れる可能性も高くなるのである。 

サラリーマン社長の自己防衛反応

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  創業社長とサラリーマン社長の決定的な違い  創業社長とサラリーマン社長の決定的な違いは、物事を短期的な視点で捉えるのか、長期的な視点で捉える事が出来るのか、と言う事ではないだろうか。  サラリーマン社長の場合は、その任期があらかじめ決まっているか、その期限がそれほど長くはない事が多い。従って創業一族による経営体制の会社やオーナー社長の会社よりも、短期的な目線で会社を経営しがちになるのである。オーナー社長は自らが最大の株主である事が多い為、長期的な目線で経営判断を下す事が出来る強みがあるが、自分の任期が見えているサラリーマン社長は、どうしても短期的な目線での経営判断に陥ってしまう事が多いのである。  創業家なら10~20年、もしかしたら100年先まで考えて会社を経営している場合もある。しかしサラリーマン社長の場合は、自分が就任している期間だけをやり過ごせばよいという考えが優先するだろう。自分の成績表である決算報告書、更に短期の四半期決算を気にして経営判断を下すと言う事が普通になってしまう。  従って例えば研究開発などの先行投資案件を判断する場合などには、オーナー社長とサラリーマン社長とでは、その経営判断は異なってくるであろう。自分が退任した後の会社の成長が自分の報酬には影響しないのであれば、目先の実績や利益だけにこだわった方が果実を得る事が出来るからだ。 また、サラリーマン社長やその経営陣に対する株主などのステークホルダーの辛抱できる期間がそれほど長くないという事も影響している。特に海外投資家の多い企業では、その評価の期間が短く指標もシンプルに時価総額の最大化・株主還元の拡大を最重要視される事が多い。理由は、海外投資家は100年企業が世界で最も多く歴史や文化を重んじる日本とは文化が異なる為、自分たちの短期的な利益だけを重要視する傾向があるからである。そのような投資家に執拗に「会社の時価総額の最大化・株主還元の拡大」を要求されるのでる。また、社長の成績表となる四半期報告書も約三か月おきに発表される為、より短期間で結果を出す事に必死になってしまう。 しかし、業種によっては長期的な視点で設備投資や宣伝広告などの様々な種まきをしなくてはならない場合もあるだろう。また、短期的な数字には表れにくく決算書に表記できないような人材育成や労働環境改善などに関する投資もある。それらの

人間的な信頼関係がお金で買えない価値を生み出す

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人間的な信頼関係がお金で買えない価値を生み出す  コレは私の友人Iさんの話である。  Iさんの会社の鉱山物を積んだ貨物船が、とある中東の港に入れずにいわゆる「沖待ち」状態になってしまった事があった。港に入れなかった名目上の理由は書類の不備という事であったが、実際には政治的な理由が複雑に絡んでいて明確な拒否理由が分からない状況であった。解決にどれくらいの時間がかかるか分からず、しかも大量の鉱山物の陸上輸送にも莫大なコストが発生する為、他の港に下ろすわけにもいかず、会社側もお手上げの状態であった。しかも巨大な貨物船を海上で待機させるだけで一日当たり数百万円単位のコストがかかる為、早急に問題を解決すべくありとあらゆる手段を模索していたのだが、全く手掛かりが無い状況だったのだ。  Iさんはこの状況を古くからの知り合いである中東の友人に話した。  「政治的な利権絡みのせいで会社が多大な損失を抱えたら、自分まで巻き添えだよ。今年のボーナスも飛んでいきそうだから今日は奢ってくれよ」  と冗談交じりに愚痴ったら、中東の友人もまた冗談っぽく、  「政府の高官に友人がいるから俺が話をしてやるよ。こういう大きな案件は通常だったらトラブルシューティング料金(問題解決料)を頂くところだが、お前には他のビジネスで色々とお世話になっているから、此処での食事代だけで勘弁してやるよ。」  と返事をしたそうだ。  すると数日後に、これまた冗談みたいな話だが何事もなかったかのように無事に貨物船の入港が許されたのだそうだ。追加の書類を提出したわけでもなく、会社側が何か特別な交渉をしたわけでもないのにも関わらず、である。  実際にIさんの中東の友人が政府の高官に話をして、問題を解決したという明確な証拠などは残っていない。また、問題解決後にその友人と会った時にも彼はニヤニヤしてはぐらかすだけで、明確な説明はなかったというのだ。Iさんから事のいきさつの報告を受けていた会社側も、問題が急展開で解決した原因を分析した結果、それ以外に理由が見当たらなかったというのであった。実際にその会社ではコレは『Iさんの奇跡』として伝説となって語り継がれているそうだ。  そしてIさんは誇らしげに、   「60歳を過ぎた私は、確かに若い人間のように世界中を飛び回れるタフな肉体も、素早い頭の回転力もないかもしれない。でも私には長年の経