人間的な信頼関係がお金で買えない価値を生み出す




人間的な信頼関係がお金で買えない価値を生み出す 


コレは私の友人Iさんの話である。 


Iさんの会社の鉱山物を積んだ貨物船が、とある中東の港に入れずにいわゆる「沖待ち」状態になってしまった事があった。港に入れなかった名目上の理由は書類の不備という事であったが、実際には政治的な理由が複雑に絡んでいて明確な拒否理由が分からない状況であった。解決にどれくらいの時間がかかるか分からず、しかも大量の鉱山物の陸上輸送にも莫大なコストが発生する為、他の港に下ろすわけにもいかず、会社側もお手上げの状態であった。しかも巨大な貨物船を海上で待機させるだけで一日当たり数百万円単位のコストがかかる為、早急に問題を解決すべくありとあらゆる手段を模索していたのだが、全く手掛かりが無い状況だったのだ。 


Iさんはこの状況を古くからの知り合いである中東の友人に話した。 


「政治的な利権絡みのせいで会社が多大な損失を抱えたら、自分まで巻き添えだよ。今年のボーナスも飛んでいきそうだから今日は奢ってくれよ」 


と冗談交じりに愚痴ったら、中東の友人もまた冗談っぽく、 


「政府の高官に友人がいるから俺が話をしてやるよ。こういう大きな案件は通常だったらトラブルシューティング料金(問題解決料)を頂くところだが、お前には他のビジネスで色々とお世話になっているから、此処での食事代だけで勘弁してやるよ。」 


と返事をしたそうだ。 


すると数日後に、これまた冗談みたいな話だが何事もなかったかのように無事に貨物船の入港が許されたのだそうだ。追加の書類を提出したわけでもなく、会社側が何か特別な交渉をしたわけでもないのにも関わらず、である。 


実際にIさんの中東の友人が政府の高官に話をして、問題を解決したという明確な証拠などは残っていない。また、問題解決後にその友人と会った時にも彼はニヤニヤしてはぐらかすだけで、明確な説明はなかったというのだ。Iさんから事のいきさつの報告を受けていた会社側も、問題が急展開で解決した原因を分析した結果、それ以外に理由が見当たらなかったというのであった。実際にその会社ではコレは『Iさんの奇跡』として伝説となって語り継がれているそうだ。 


そしてIさんは誇らしげに、

 

「60歳を過ぎた私は、確かに若い人間のように世界中を飛び回れるタフな肉体も、素早い頭の回転力もないかもしれない。でも私には長年の経験と人間力、何より世界中の友人を魅了する素敵な人間性が備わっているんだよ。つまり、私という人間にはお金で買えない価値があるんだよ。歳をとっても高額な報酬を会社が私に払っている理由が分かっただろ?」 


と笑いながら私に話してくれたのである。実際に今回の事例だけでもIさんのお陰で会社は数千万円いや、もしかしたら数億円単位の損害を未然に防ぐ事が出来ているのである。 


常日頃からベテラン社員の大切さを語っている私にとっても、この逸話は非常に感銘を受けたというか感動させられる、非常に嬉しいものであった。 




Comments

  1. 日本人らしさが出ていて良いです

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  2. The knowledge and experience of the author is amazing. I've been to Japan few times and always shocked with their hospitality standard. This blog gives you the idea of the Japanese hospitality and management

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