60歳以上のベテラン駐在員の大切さ




 60歳以上のベテラン駐在員の大切さ 


海外駐在は、日本とは生活環境が異なる為、精神的なストレスや負担が大きくなる。言葉の壁以上に、宗教や文化の違いからくる価値観の違い、食文化の違い、安全面の不安要素、というのが多くのストレス要因となっている。特に製造業や商社の方は、発展途上国や後進国への駐在も多く、苦労している駐在員は少なくない。将来を期待されている人材程、視野を広げたり人脈を築く為に、多くの国を経験させる傾向が見られる。 


こうして、日本国内は勿論の事、海外での現場にも精通して海外での様々な対応力も鍛えられた人材が満を持してシンガポールに駐在員として派遣されるのである。シンガポールは、アジアの本社機能的な位置づけである事が多い為、実際に肩書はシンガポールに設立した子会社の社長や役員である事も多い。また、シンガポール駐在員はその役職や立地的に海外出張も多く肉体的な負担も重く、将来的には日本の本社にて重役に就く事を想定されているので脂の乗り切った40代から50代が多く、行動力を期待されて30代後半の方もいる。 


繰り返しになるがシンガポールは物価が非常に高く、住宅手当や子供の教育等の家族手当の負担も大きい為、会社からしてみたら他の国の駐在員よりもコストの高い人材という事になる。従って、今まで以上に費用対効果を求める事になる。しかしまだ海外での経験が浅い若手の人材は、人生で初めて使用を認められた「コーポレット・クレジット・カード」に浮かれて必要以上の経費や本来は使用できない場面での使用を繰り返したり、費用対効果の非常に低いと分かっている状況での使用の頻度が高かったりする。また経験豊富な中年世代の人材でも、これまでの赴任地よりは環境が恵まれているシンガポールで気分が高まり、必要以上の経費を浪費するケースが多々見られる。 


従って、最初は若手の有望株を派遣したのだが数年後に、ベテランの古株を出戻りで駐在員として派遣してくるケースも多くみられる。たいていが60歳を超えた人材で、日本国内で言えば定年退職して役職も給与も下げられているケースが多い年代の人材が、実は海外では非常に重宝される事が少なくない。60歳を過ぎてから、その経験の豊富さや人脈の太さを買われて、海外企業にヘッドハンティングされるケースも多く見てきた。頭の回転の速さ・行動の迅速さ・体力的なフットワークの軽さ等は、確かに年齢の若い人材の方が勝るかも知れない。しかしそれらを補って余りある能力というか才能が、ベテラン人材にはあるという事実を理解している企業も増えてきている。特に平均寿命が世界一高い日本の人材は、実は肉体的にも精神的にも60代はまだまだ伸び盛りであると証言するオーナーさんや投資家の方も多くいる。 


企業が海外に若手社員を駐在員として派遣する目的は、経験を積ませて視野を広げさせたり、人間的な成長を促す為である。 


企業が 


「海外で果実を得たい」 


「新規の契約を得たい」 


「既存の契約の延長や更なる大きな契約に更新したい」 


等、今すぐ成果を出したいと感じているので場合は、経験豊富で人脈もあるベテラン人材を派遣する事が非常に多いのである。 


私は断言するように書いているが、必ずしもそうではないというのも事実である。また、読者の中には反論する方もいらっしゃるであろう。私は若手の人材が成果を生む事が困難であると言っているわけではないし、ベテラン人材が必ず成果を生み出せると言っているわけでもない。ただ、「その可能性が高い」、と言う事である。 


誤解を恐れずに言うのであれば、ビジネスは確率の問題である。より成功する確率が高い判断の繰り返しによってビジネスは継続していく可能性を高める。当然リスクを負う事も大切ではある。新しい分野にチャレンジしたり、今までになかったような斬新なアイデアや事業に投資をしなくては、更なる発展は難しいかもしれない。しかし、無謀なチャレンジばかりを続けていたら事業の安定した成長は難しい。新しい分野に投資を続けるには資金がいる、その間にも人件費等の固定費用は発生し続ける。 


従って、実はオーナー様や投資家にとっては、冒険的な経営判断よりも、よりリスクの低い地味でより現実的な判断を下す事の方が多くなるのである。オーナー様や投資家は、新規分野への投資等の新しいチャレンジの9割は失敗するという事を、実体験を通じて知っているからである。 

Comments

  1. このような記事は嬉しいですね❢

    ReplyDelete
  2. このような記事は、元気になりますね。高齢化社会と言われますが、平均寿命が伸びた現代社会では、60歳はまだまだ若いですし。

    ReplyDelete
  3. 非常に実践的な思考法で、参考になります。日本国内はもちろん、海外でのマネジメント経験が豊富な方のブログだなと、という感想を持ちました。「世界一のレストランの成功の極意」もアマゾンで購入させて頂きました。良かったです。

    ReplyDelete
  4. I admire the Japanese management style and ideas.

    ReplyDelete
  5. Japanese management ideas are very sensitive and effective, I think. I have few Japanese managers friends and they are all really good people.

    ReplyDelete
  6. とても参考になります。素晴らしい内容の執筆活動、ありがとうございました

    ReplyDelete

Post a Comment

Popular posts from this blog

資産家の一億円の使い道

海外で成功するのは、朱に交わっても赤くならない人間

The dish is not completed in the kitchen, it is completed on customer’s table